アルツハイマー型認知症(AD)は、生活習慣病と同様に連続性(Continuum)のある疾患で、臨床症状のないプレクニカル期(プレクニカルAD)、さらにADの前段階の軽度認知障害(MCI
due to AD)を経て発症にいたると考えられている。プレクニカルADからMCI,ADへの病態進行を反映するバイオマーカーはADの認知症予防を実現できる有効な手段である。毎年出されるアルツハイマー病協会(Alzheimer's
Association)のFacts & FiguresにはSpecial ReportとしてADのバイオマーカーを用いた診断検査のAD研究の最優であると述べられている。
世界中の製薬メーカーがADの治療薬を開発しており、現在105の治療薬開発が進行しており、42の治験が第三相にある[15]。疾患修飾薬やA
βに対する抗体医薬の治験において、すでにバイオマーカーは重要な位置づけとなっており、被験者の同定とアウトカムの評価に取り入れられつつある。しかし、薬事承認における治験のアウトカムとしては認知機能など臨床評価となっているため、アミロイドPETや髄液A
β量に改善が認められたとしてもドロップしてしまう。これは投薬すべきタイミングをもって早い時期、早期のMCIやプレにクリニカル期に行えば、より高い効果が認められると考えられる。
そのためには、アウトカムを糖尿病における血糖値と同じようバイオマーカーの改善として定義されることが必要である。血糖値と同じように、血液(血漿・血清)中のバイオマーカーを用いたMCIやプレクリニカルADの診断や病態評価のための検査があればADの治療は大きく変わる。そこで本講演では、現状のADならびにMCI、さらにpreclinical
ADについてのバイオマーカーについて総括したい。
・認知症の現状
-疾患の種類と特徴
-今のADの医療は、糖尿病において血糖値が測れない状況と同じ
-我が国と世界の認知症患者数の現状と今後
-認知症の診断と治療
・アルツハイマー病(AD)の新しい疾患概念と発症機構
-プレクリニカルAD
-アミロイドβとタウ − 主な病因分子
-アミロイドβクリアランスと アミロイドβによるシナプス障害のしくみ
・アルツハイマー病(AD)と軽度認知障害(MCI)のバイオマーカー
-アミロイドβクリアランス
-早期発見と早期介入で発症予防ができる
・バイオマーカーをどう評価するか?
・今後の展開
【質疑応答】
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