形状記憶 金属 書籍
No.1879
 

形状記憶合金 産業利用技術

〜基礎およびセンサ・アクチュエータの設計技法〜

発刊日:2016年7月  体 裁:B5判 256頁  定 価:39,000円(税抜)

発行:(株)エヌ・ティー・エス  販売:(株)技術情報協会  ISBN:978-4-86043-448-9


 

アクチュエータやセンサを開発・作成するための実務用手引書。

詳細な説明はもちろん、材料選定方法から、実用化にあたって課題となっていた問題点の解決方法、流用できる回路図などに加え、形状記憶合金の「変形・変態挙動解析ソフト」をダウンロードして活用できる、実務のための一冊。

幅広い利用価値のある形状記憶合金は、使いこなせればそこには明るい未来がある。

 

■ 執筆者とな目次

著者 佐久間俊雄 鈴木章彦 竹田悠二 山本隆栄

 

第I部 形状記憶合金の特性

第II部 変形挙動を表わすシミュレーション手法

第III部 アクチュエータの設計

第IV部 アクチュエータ・センサの設計マニュアル

第V部 シミュレーションプログラム

 

発刊の言葉


■ 著者略歴(執筆順)

第I部 第III部
佐久間 俊雄 Toshio Sakuma(工学博士)
昭和51 年 3 月 東京工業大学大学院修了
昭和51 年 4 月 財団法人 電力中央研究所
平成17 年 4 月 大分大学工学部教授
現在 同大学客員教授
専門分野:熱工学,材料科学,セラミックス

第II部
鈴木 章彦 Akihiko Suzuki(工学博士)
昭和50 年 3 月 東京大学大学院修了
昭和50 年 5 月 石川島播磨重工業株式会社技術研究所
平成15 年10 月 埼玉大学大学院教授
平成21 年 4 月 大分大学客員教授
現在 株式会社ベストマテリア
専門分野:材料力学、計算力学,セラミックス強度評価

第IV部
竹田 悠二 Yuji Takeda
昭和39 年 3 月 中央大学理工学部電気科
昭和39 年 4 月 東京芝浦電気株式会社放送機事業部放送機課
昭和43 年 4 月 電子技巧株式会社設立
昭和49 年 6 月 東京新電機株式会社
平成12 年 1 月 タケ研(個人事業所)設立、現在に至る
専門分野:メカトロニクス設計・製作

第V部 ソフトウェア
山本 隆栄 Takaei Yamamoto(博士(工学))
平成 9 年 3 月 立命館大学大学院理工学研究科博士課程単位取得退学
平成 9 年 4 月 大分大学工学部生産システム工学科 助手
平成19 年4 月 大分大学工学部機械・エネルギーシステム工学科 助教,現在に至る
専門分野:材料強度学

※ 2016年7月現在。変更の可能性があります


◇ 第I部 形状記憶合金の特性 ◇

はじめに

第1章 形状記憶合金の種類と性質
1 形状記憶合金の種類
1.1 Ti-Ni 合金
1.2 Ti-Ni-Cu 合金
1.3 銅,鉄系合金
1.4 その他の合金
2 応用例
2.1 利用方法
2.2 回復力の温度感受性
2.3 変態温度ヒステリシス
2.4 変態応力ヒステリシス
2.5 低弾性係数

第2章 マルテンサイト変態と形状記憶特性
1 形状記憶効果と超弾性のメカニズム
2 二方向形状記憶効果
2.1 熱・力学サイクル特性
2.2 塑性ひずみ/ 残留マルテンサイト相分率
2.3 負荷ひずみと加熱温度

第3章 変態温度に及ぼす因子
1 合金組成 2 冷間加工  
3 記憶処理温度
4 時効処理
5 予変形
6 繰返し特性

 

第4章 熱・力学的特性
1 回復応力と変形応力
2 形状回復ひずみと残留(非回復)ひずみ
3 繰返しにともなう変化
4 疲労寿命

第5章 電気的特性
1 電気抵抗―温度,ひずみ関係
2 比抵抗に及ぼす加工,熱処理
3 一定温度下における比抵抗

第6章 特性評価試験法
1 変態温度(無応力下における測定方法)
2 機械的性質の測定
3 予ひずみ付与下における測定
3.1 ひずみ非拘束加熱
3.2 ひずみ拘束加熱
3.3 二方向ひずみ
4 変態限界応力―温度関係の測定方法
5 電気抵抗の測定方法


◇ 第II部 変形挙動を表わすシミュレーション手法 ◇

はじめに

第1章 形状記憶合金変態挙動
1 変態の微視的様相
2 形状記憶効果および超弾性挙動のメカニズム

第2章 微視的変形・変態機構を考慮した構成式モデル
1 材料の微視構造
2 アコモデーションモデル
3 結晶粒方位および体積分率と部分要素の体積分率
4 変態条件
4.1 変態駆動力
4.2 変態条件
4.3 逆変態条件
4.4 再配列条件
4.5 変態応力の温度依存性
5 アコモデーションモデルの定式化
6 計算手順
6.1 負荷条件としてひずみ経路(および温度経路)が与えられる場合
6.2 負荷条件として応力経路(および温度経路)が与えられる場合
7 材料定数
7.1 晶癖面および変態方向
7.2 変態固有ひずみ
7.3 弾性定数
7.4 変態応力および逆変態応力の温度依存性およびマルテンサイト再配列バリア応力
8 アコモデーションモデルの応答計算例  
8.1 超弾性挙動
8.2 形状記憶効果
8.3 多軸応力場における解析・比例負荷
8.4 多軸応力場における解析・非比例負荷

 

第3章 現象論的構成式
1 背 景
2 等応力モデル
2.1 等応力モデルの概要
2.2 変態および逆変態の評価におけるMises の相当応力
2.3 応力誘起変態および温度誘起変態
2.4 変態限界応力の温度依存性
2.5 エレメントおよびサブエレメントの応力誘起変態特性
2.6 等応力モデルの定式化
2.7 計算手順
2.8 等応力モデルに必要な材料定数
2.9 等応力モデルの応答計算例
3 その他のモデル
3.1 田中のモデル
3.2 徳田のモデル
3.3 Brinson らのモデル
3.4 Yu らのモデル

【付 録】座標変換
1 テンソルの座標変換
2 結晶粒系のひずみおよび応力と変態システム系のひずみおよび応力の変換
3 マクロ座標系のひずみおよび応力と結晶粒座標系のひずみおよび応力の変換


◇ 第III部 アクチュエータの設計 ◇

はじめに

第1章 形状記憶合金のアクチュエータ等への利用方法
1 形状記憶合金とバイアスばねの連結
2 形状記憶合金の拮抗型連結
3 アクチュエータの応答性向上対策
3.1 逆変態開始/ 終了温度差
3.2 変態温度ヒステリシス 3.3 逆変態温度上昇分

第2章 エネルギ変換素子としての応用
1 低温廃熱エネルギの賦存量とその活用技術
2 低温廃熱エネルギの利用効率
3 形状記憶合金のエネルギ変換素子としての利用
3.1 超弾性を利用したエネルギ貯蔵
3.2 形状記憶効果を利用したエネルギ変換
4 熱エンジン
4.1 これまでに提案されている熱エンジンの種類と特徴
4.2 熱エンジンの作動原理
4.3 エンジン出力に及ぼす影響因子
4.4 繰返し特性と素子の疲労寿命
4.5 素子破断に至るまでの仕事量
5 形状記憶合金のエネルギ変換効率

第3章 形状記憶合金を利用したエネルギ変換システムの設計 1 システム構成  
2 システム設計
2.1 基本仕様
2.2 変換素子数
2.3 廃熱量
2.4 熱効率
3 低温廃熱からの回収動力の試算
4 変換システムの発電コスト
5 課題と展望
5.1 変換システムの開発について
5.2 変換素子について

第4章 形状記憶合金を利用したパイプ継手の設計
1 継手(リング)の設計・製作手順
2 継手素材の選定
2.1 合金組成
2.2 変態温度
2.3 機械的性質
2.4 熱力学特性
3 継手の製作
3.1 熱間加工
3.2 特性評価
3.3 時効処理
4 拡管
5 性能検査
5.1 継手施工性の確認試験
5.2 引抜試験
5.3 疲労試験

◇ 第IV部 アクチュエータ・センサの設計マニュアル ◇

はじめに

第1章 位置制御システム
1 一方向性と二方向性の形状記憶合金の相違点について
2 抵抗値とひずみとの関係
3 SMA ワイヤを用いたアクチュエータの位置決め制御方式
3.1 通電加熱の基本
3.2 印加電圧の可変方法
3.3 SMA ワイヤ駆動のアクチュエータをサーボ化するには
3.4 抵抗値の変化をフィードバックして位置制御するには
3.5 計装アンプを用いた位置制御方法
3.6 パワー駆動部をPWM で制御する方法
3.7 力(推力,トルク)の制御方法
3.8 外部センサを用いた位置制御方法
3.9 SMA ワイヤの拮抗制御方式
3.10 位置制御システムの制御特性  
3.11 SMA ワイヤで動くモデル例

第2章 1本の形状記憶合金線で温度とひずみを検知するセンサ
1 検知原理
2 回路図
3 応用への展望

第3章 超弾性SMA をセンサとして使う方法
1 SE ワイヤを用いた振動検知機構と原理
2 回路図
3 応用への展望

第4章 マクロ的ひずみセンサ
1 マクロ的ひずみとは
2 ひずみセンサとして使用した場合の力の方向によるひずみ量の違い
3 建造物のひずみをSE ワイヤで測定した場合
4 回路図
5 SE ワイヤを直線ひずみとして使用するマクロ的ひずみセンサ
6 応用への展望


◇ 第V部 シミュレーションプログラム ◇

はじめに

付録ソフトデータマニュアル
1 解析作業の流れ
2 入力データの作成  
2.1 材料定数

2.2 初期温度
2.3 負荷条件
3 解析計算
4 結果の評価

■ 発刊の言葉

 形状記憶合金はその特異な性質から工業,医療などさまざまな分野での応用が期待され,実 用化もされている.なかでも,同合金を用いたアクチュエータは,その駆動方法が流体加熱あ るいは通電加熱であり,機械的な駆動部分が少ないため,機械的・電気的なノイズがほとんど 発生せず,また,システムもコンパクト化が可能であり,関心を寄せる研究者や技術者は多い.

 しかし,形状記憶合金の形状記憶効果や超弾性などの知識を有していても,システムを設計・ 製作するには種々の課題があり,実用化されているアクチュエータは少ないのが現状である.

 本書の特徴の概略を述べると,以下のようである.

・ 形状記憶合金を用いた排熱を駆動熱源とする熱エンジンや抵抗値をフィードバックして位 置制御が可能な通電式アクチュエータ,および環境温度の変化や外部からの力による抵抗 値の変化を温度・ひずみに変換してセンサとして使用する仕組みを,具体的に,かつ,わ かり易く記述していること.

・ 精度のよいシミュレーション手法を提供することにより,材料の選定(形状・寸法等)や システム設計を行う予備設計が可能であること.

・ シミュレーションの基礎となる構成式が,従来から提案されている構成式に比べて必要と なる材料定数や実験データが少なくてすむこと.

・材料定数や実験データの取得方法についても,具体的に記述していること.

 本書は,実用化に至っていない課題等を具体的に述べるとともにその解決策を示し,予備設 計から製作までの道標を著したものであり,第I 部〜第V 部で構成されている.

 第I 部では,形状記憶合金を利用したアクチュエータやセンサを設計・製作するために必要 となる形状記憶合金の性質,すなわち形状記憶効果や超弾性の基本的な特性について記述して いる.尚,本書で取扱う形状記憶合金は,特性に優れ,かつ,材料メーカが供給可能なTi-Ni 系合金を対象としている.

 形状記憶合金は,その特性を繰り返し利用できることが大きな特徴であるが,繰り返し使用 後の特性変化を把握しておくことは,設計を行う上で重要である.そこで,加熱・冷却,負 荷・除苛を繰り返したのちの回復力,形状回復量,変態温度の変化等について記述している. また,設計・製作者が所望する特性を発現させるための加工方法,熱処理方法についても記述 しており,さらに,特性を評価する試験方法についても詳述している.

 第U部では,形状記憶合金の実使用条件となる予変形や,加熱温度等に対する形状回復量 や,回復力等の変形挙動をシミュレーションする手法を記述している.形状記憶合金の変態 は,固有の変態面および変態方向において生じる.変態面および変態方向を合わせて変態シス テムと呼ぶことにすると,1 つの結晶粒において24 通りの変態システムがあり,与えられた 力学的条件のもとで,多結晶形状記憶合金のそれぞれの結晶粒でどの変態システムが活性化す るかは,内部エネルギが最小となるように決定される.形状記憶合金の変態におけるこのよう な作用を「アコモデーション」と呼ぶが,一定ひずみの仮説を用いることにより,これを数式 化したモデルがアコモデーションモデルである.またこのモデルは,材料の微視構造を参照す るモデルであるため,変形計算に要する計算量が大きくなるが,これを簡略化した現象論的な 構成式も合わせて提案している.ただし,簡略化したモデルにおいては,種々の応力/ 温度 条件における変態ひずみ挙動のデータが必要となる.このデータは,実験によって取得する必 要があるが,実験をすることが難しい条件におけるデータは,前述のアコモデーションモデル の計算結果により代用することができる.アコモデーションモデルによるシミュレーションに ついては,読者が解析ソフトを作成できるようその詳細を記述している.本書では,簡略モデ ルによる解析ソフトを提供しており,さまざまな設計条件に対する変形挙動が解析できる.

 第V部では,これまで形状記憶合金を利用したアクチュエータが実用化に至っていない理由・ 課題を具体的に述べ,その解決策を提示している.このために,実際に設計・製作した代表的 な具体例を詳述し,読者が実際にアクチュエータを設計・製作する際の考え方,留意すべき点 等が理解でき,具体例を参考に新たなアクチュエータを設計・製作できる内容となっている.

 第W部では,これまでほとんど応用例がないセンサとしての利用方法を含め,アクチュエー タ・センサの設計マニュアルについて記述している.具体的には温度/ ひずみセンサや振動 センサとしての利用方法,考え方を提案している.このために,アクチュエータ・センサの作 製に必須となる制御回路を例示し,かつ制御回路では抵抗値等の数値情報を可能な限り表記 し,そのまま流用できる制御回路を提示してあり.読者の新たな発想を喚起し,さまざまな分 野への応用開発の試作品が作製できるように記述してある.

 第V 部では,本書の付録として提供する形状記憶合金の変形/ 変態シミュレーションプロ グラムについて記述している.本シミュレーションプログラムは,「第U部 変形挙動を表す シミュレーション手法」の「3 現象論的構成式」で述べる計算手法に基づいており,4 種類の 材料定数と,最大10 ステップまでの応力または温度の変動負荷の負荷条件を入力することに よって,形状記憶合金の複雑な変形・変態挙動をシミュレーションすることができる.本書の 理解の一助となるよう,ぜひ,ご活用いただきたい.

 本書の読者としては,企業で応用開発に携わる技術者およびスマートシステム,マイクロマ シン,医療用器具の開発者等の多方面の研究・開発者,ならびに大学の機械系,電気系,材料 系,医工連系の学生,教員を想定している.形状記憶合金の産業から医用までの幅広い分野へ の応用拡大の中で,本書の必要性は極めて高いものと確信する.

終わりに,本書の出版を快諾され,種々のご高配を賜りました株式会社エヌ・ティー・エス の吉田隆社長をはじめ各位のご協力に深く感謝する次第である.

2016年7月
執筆者一同
佐久間俊雄,鈴木章彦,竹田悠二,山本隆栄
(50音順)

 

※ 2016年7月現在。変更の可能性があります

 

形状記憶 金属 書籍