【講座主旨】
医薬品添加剤は有効成分の物性や機能の改善・差別化に貢献している。有効成分を上回る量の添加剤も多くみられ、新たな添加剤の承認には治療量において薬理作用を示さず、無害(安全性データ)であることの検証が行われ、有効成分とともに承認される。
我が国の新添加剤承認申請における安全性に係わる試験資料はPharmStage(技術情報協会刊本年1月号)に記載した。新添加剤とは、使用前例のない新規の構造あるいは医薬品以外の添加物の転用、既承認であっても新しい投与経路(剤型)、1日最大使用量(処方量)を超える添加剤などの場合が該当し、安全性担保のための非臨床試験成績や信頼のおける資料(文献など)をもって承認申請する。
また、海外からの新医薬品有効成分と添加剤は導入品の増加に伴い、国内外の規制を見据えた安全性のデータ戦略が必要となる。米国について新添加剤と新有効成分ではFDAの安全性評価ガイダンス、既存有効成分とでは、USP
1074安全性評価ガイドラインが発出されている。安全性データ資料については業界団体IPEC(International
Pharmaceutical Excipients Council)からSafety Guide改訂版が本年に発刊された。
国外との相違を含めて、本セミナーでは、安全性データと申請資料の作成について事例と我が国の規制状況を解説する。
【講演内容】
1.はじめに
1.1 新添加剤とは
1.2 医薬品の新添加剤と製造販売承認資料
1.3 国内の使用前例(最大使用量)と投与経路
1.4 国外の使用前例情報
1.5 添加剤の安全性試験と文献情報
1.6 安全性試験の被験物質(添加剤と製剤、不純物)
2.安全性に係わる試験ガイドライン
2.1 新有効成分と新添加剤
・ICHガイドライン
・米国FDA安全性ガイダンス
2.2 既承認有効成分と新添加剤
・米国USP<1074>安全性ガイドライン
2.3 業界団体IPECの改訂版安全性ガイド
・自主基準の特徴と改正点
2.4 不純物と生成物のICHガイドライン
・変異原性不純物のPDE試算
3.新医薬品添加剤の承認申請資料と事例
3.1 新規構造
3.2 新投与経路/剤型
3.3 新用量(最大使用量/処方量を超える量)
3.4 その他、申請資料の作成・整備のポイント
・安全性情報の検索サイト
・ICH CTD(コモンテクニカルドキュメント)書式
3.4 GLP調査並びに書面調査対応
4.既存の非臨床安全性資料の活用
4.1 医薬品・食品・化学物質等の添加物データベース
4.2 STEP(Safety & Toxicity of Excipients
for Paediatrics)データベース
4.3 新添加剤承認事例
【質疑応答】
●講師略歴
獣医師として診療を経験後、台糖ファイザー株式会社薬理研究所(現:ファイザー株式式会社)に47年前に入所、感染症試験などを含む薬効薬理、薬物動態や毒性試験に従事し、毒性試験責任者となる。その間、名古屋市立大学の病理学教室でミトコンドリアの細胞病理機能で医学博士号を取得した。モントリオール大学医学部薬理・毒性学教室で薬物と肝毒性について研鑽する。米国におけるGLP適合Xybion
Medical system(現:Xybion社)の上級システムマネージャ−や第三者機関のComputer
System Validation研修を受けた。ファイザー社では、毒性部門や病理部門の長、GLPの適合性調査などを経験した後、新薬申請業務(非臨床試験)に携わる。定年時に同社中央研究所閉鎖となり退社し、安全性に係わる新薬の開発や信頼の置ける資料の作成についてコンサルティングを行っている。
一連のげっ歯類毒性試験の実施・承認申請として医薬品の有効成分ではAmlodipine、添加剤ではSBECD(Sulfobutylether
beta-Cyclodextrin sodium)などがある。
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