【講座主旨】
近年の動物実験に対する法規制や動物愛護の観点から、動物を用いない皮膚感作性評価手法の確立が求められており、幾つかの有用な代替法がOECDテストガイドライン
(TG) に収載されている。一方、これまでの代替法には難水溶性物質(e.g. LogKow>3.5)の適用性が低いなどの共通の課題が存在していた。これに対し、我々は再構築ヒト表皮モデル(RhE)を用い、感作特異的なマーカー遺伝子の発現を指標とする代替法Epidermal
Sensitization Assay (EpiSensA)を開発した。EpiSensAは動物実験と同様に被験物質原体や、有機溶媒を用いた曝露が可能である。難水溶性物質を含む多様な136物質を用いた検証の結果、既存代替法では判定不可の物質を含めてすべて判定可能、かつ動物実験LLNAに対する一致率は82%と、高い適用性と予測性が確認された。2018年よりJaCVAM主導の下で国際validation研究が行われ、2024年6月に、RhEを用いた初のin
vitro皮膚感作性試験法としてOECD TG 442Dへと収載された。本セミナーでは、EpiSensAの開発背景や性能解説を交えながら、標準作業手順書(SOP)やTGの記載内容を中心に、EpiSensA実施における注意点、重要なポイントを主に解説する。
【講座内容】
1.EpiSensAの開発背景
2.他のTG法と比較したEpiSensAの性能評価
3.OECD TG収載に向けた取り組み
4.感作性判断におけるEpiSensAの活用
5.EpiSensAのプロトコル解説
6.試験実施における手技上のポイント、注意点
7.使用する器具、試薬、機器などに関して
8.データ判断の注意点
9.試験の適用範囲、Limitationに関して
10.技術移管、手技習熟確認に関して
【質疑応答】
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◆講師プロフィール◆
・専門分野:毒性学
・学位:博士(工学)
・略歴:
2011年 3月 九州大学 工学部 物質科学工学科 卒業
2012年 3月 九州大学大学院 工学府 物質プロセス工学専攻 博士前期課程 修了
2015年 3月 九州大学大学院 工学府 物質プロセス工学専攻 博士後期課程 修了
2015年 4月 花王株式会社 入社 安全性科学研究所へ配属 現在に至る
・所属学会
日本動物実験代替法学会 代議員
日本毒性学会 学会員
・受賞歴
日本動物実験代替法学会 第30回大会 優秀演題賞
日本動物実験代替法学会 第33回大会 優秀演題賞
日本動物実験代替法学会 第36回大会 優秀演題賞
日本動物実験代替法学会 2024年度 学会賞(Replacement部門)
2021年度 日本毒性学会 田邊賞
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