【講座主旨】
日本において統計的方法が活用された分野に「品質管理」があります。品質管理の課題は,「品質特性の値がその理想値に近づく設計及び製造条件を見出し,それを研究して実現すること」です。そのためには,「実験研究あるいは観察研究によって,特性と要因の統計的関係を明らかにする」必要があります。
(以上,宮川先生「統計的因果推論」より抜粋)
本講演では,化粧品の品質管理のための統計的モデリングとして「相関分析」と「回帰分析」を考え,
1)観察研究における予測(製品の経時安定性予測,温度と安定性の関係,成分の寿命期間の推定など)
2)実験研究における因果効果の発見(設計パラメータと製品品質の因果関係,ノイズに強いパラメータの設計,製品物性の許容差設計,製品物性と工程因子の制御など)
について議論します。
医薬品ではこれらをICH Qトリオとして,製品の開発段階では,Quality
by Designに基づいて,Design Spaceを構築して,スケールアップ段階にはQuality
Risk Managementを行い,上市段階ではPharmacies Quality systemで管理する方法を推奨しています。
品質工学ではこの流れを,Parameter Design,Tolerance Design,
Statistical Process Controlとして体系化しています。考え方の理解には統計的思考や数理計算の方法などが求められます。
この取り組みの中に統計モデルを用いることで,データの頑健性と再現性が得られます。
また,具体的な計算過程において,演習課題を設定してEXCELを用いて解析することを目指して,統計的な解析手順を学びます。
【講座内容】
1.統計の基礎
1.1 変動の分解
1.2 分散分析の活用
2.相関と回帰
2.1 相関とは
2.2 回帰関係とは
2.3 回帰分析
3.観察研究におけるQCストーリー(SQC)の活用
3.1 QCストーリーとは
3.2 QCストーリーの手順
3.3 継続改善の勧め(PQMの活用)
4.観察研究における回帰分析
4.1 アレニウス式を用いた加速試験と経時安定性の関係
4.2 医薬部外品主剤の保存性予測
4.3 工程中間特性による最終製品物性の制御(RTRTの思想を化粧品で具現化)
5.実験研究における因果関係分析(実験計画法を用いた直交展開)
5.1 チェビシェフの直交多項式とは
5.1.2 多元配置実験におけるチェビシェフの直交多項式分解
5.1.3 直交表を用いたチェビシェフの直交多項式分解
6.実験研究における回帰分析(パラメータ設計)
6.1 基本機能と目的機能
6.2 パラメータ設計の考え方
6.3 動特性のSN比とは
6.4 パラメータ設計演習
6.5 製品特性の許容差設計
7.まとめ
【質疑応答】
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◆講師プロフィール◆
・専門:タグチメソッド、化粧品GMP、品質管理、技術開発
・略歴・活動:
昭和52年4月 株式会社小林コーセー(現株式会社コーセー)入社
平成04年7月 株式会社アルビオンに転籍
平成29年4月 株式会社ウテナへ(現職:常務執行役員 開発統括部長)入社
・資格等:甲種危険物、有機溶剤主任者、品質管理検定1級,公害防止管理者水質4種,技術士(経営工学部門)等
・所属学会:品質工学会(代議員),日本品質管理学会会員,品質工学フォーラム埼玉(顧問),日本技術士会(経営工学)会員
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