【講演ポイント】
地上では重力の効果により見い出しにくかった表面張力や濡れなどの現象が、宇宙船の中では顕在化し、濡れ性や表面張力を意識した流体ハンドリングが重要となります。
浮力対流の陰に隠れていた「マランゴニ対流」も宇宙で顕在化する現象の一つです。「マランゴニ対流」という言葉は初めて目にした方が多いと思います。アポロ計画以後、宇宙空間を生産活動の場とする試みが計画されだしたころから、にわかに注目されるようになりました。日常生活の中では、洗面器の水面に落ちた練り歯磨きのかけらが素早く動きながら見る間に広がって、やがて水面が静止する現象が観察されます。これらが表面張力駆動流であるマランゴニ対流現象です。
また、宇宙では気体と液体が一旦混合すると比重差による分離効果がないため気液分離に関する工夫が必要です。マイクログラビティおよびマイクロスケールではぬれ性の効果が支配的になります。
本講演では、微小重力場における流体のハンドリングに向けて、表面張力駆動流 (マランゴニ対流)
に関する基礎知識と濡れ性、表面張力の基礎から応用まで、実例を交えて解説します。
【プログラム】
1.微小重力場における濡れ性・表面張力の顕在化
2.濡れ性・表面張力にまつわる測定手法の解説
2.1 静的接触角、動的接触角とその測定方法
2.2 繊維、固体表面の撥水性評価方法
2.3 表面張力とその測定方法
2.4 表面粗さの評価方法
2.5 接着性の評価方法
3.マランゴニ対流の発生メカニズムとその制御
4.濡れ性、表面張力の制御方法の解説
4.1 前処理および洗浄
(ピラニア洗浄、RCA洗浄、超臨界洗浄、UV、プラズマ照射)
4.2 化学的表面改質を利用したぬれ性制御
(シランカップリング材他)
4.3 表面ラフネスを利用したぬれ性制御
(Wenzelの式、フラクタル表面)
4.4 表面へのぬれ性パターン付与方法
5.濡れ性、表面張力の活用に向けた現状と将来動向
6.微小重力場における流体ハンドリング技術の現状と将来動向
【質疑応答】
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