【講座主旨】
分離精製や粒子群製造の目的で「再沈」や「再結晶」とも呼ばれる晶析操作が行われている。ところがその操作の少しの違いが、最終製品や生産性に影響を与える。例えば、純度、多形、粒径分布など粒子群特性に関わる課題である。結晶性物質を製造する上で最も基本的な概念は、結晶化現象をつかさどる推進力「過飽和」である。槽型装置を用いた回分晶析では、結晶化とともに過飽和が消費されるため、それを補うように、冷却や非(貧)溶媒添加などを調整しながら行う必要がある。しかし、連続晶析の場合、極端に表現すると定常状態となっていれば、経時的な調整操作は必要としない。この考え方が重要で、連続晶析であれば、結晶粒子群の安定製造が可能となる理由がそこにある。ただし、例え連続晶析であっても過飽和を推進力とする結晶化現象の理解は必須で、その関係を正確に把握できていれば、より精密な特性制御が可能となる。
このセミナーでは、連続フロー晶析がなぜ注目されるのか、その本質を解説するとともに、結晶粒子群の特性制御について、過飽和の観点から紹介し、どうやれば、結晶粒子群に所望の特性を作り込めるのかに答えながら、晶析の操作戦略について解説したい。
【講座内容】
1.「再沈」「再結晶」と晶析との接点
1.1 有機合成と工業晶析操作との接点とは
1.2 晶析操作によって作り込める製品特性とは
1.3 連続フロー製造が注目される理由とは
2.晶析操作の工夫による結晶粒子群の特性制御
2.1 結晶化の推進力と固液平衡
2.2 核発生と成長
3.今すぐ役立つ結晶粒子群を創るためのポイント
3.1 安定した結晶を思い通りに創りたい場合
3.2 結晶の純度を思い通りに良くしたい場合
4.思い通りに結晶を創るための晶析操作設計法
4.1 晶析操作設計の留意点
4.2 結晶粒子群の連続フロー製造での留意点
5.まとめ
【質疑応答】
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◆講師プロフィール◆
専門分野:晶析・異相界面工学
学位:博士(工学)
略歴・活動・著書など:
平成 4年3月 東京工業大学 総合理工学研究科 修了 博士(工学)
平成14年8月 東京農工大学 工学部 化学システム工学科 助教授
平成23年4月 東京農工大学 大学院 工学研究院 教授
平成27〜31年度 化学工学会・材料界面部会・晶析技術分科会代表
平成23年〜現在 EFCE Working Party on Crystallization
Guest Member
平成30〜令和6 日本海水学会 編集担当理事
令和2〜令和6 分離技術会副会長
令和6〜 日本海水学会 副会長
令和6〜 分離技術会会長
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