【講座概要】
スクリーン印刷は、その原理とメカニズムを正しく理解すれば、実は最も安定した印刷工法であると納得できます。インク転写の原理は、孔版であるスクリーン版を通して、ゴム製のスキージでインキを強制的に押し出すものであり、他の印刷工法とは異なり、凸凹の基材上にも厚いインキ塗膜を均一に印刷する事が出来ます。これまで多くの方が、スクリーン印刷が「管理困難」であると思い込んでいた原因の多くは、スキージやインキ、スクリーン版の適正化が不十分だったからです。
スクリーン印刷にも実践的な理論と「標準」があります。インキ、ペーストの身になって印刷プロセスを考える「ペーストプロセス理論」であり、それに基づいて策定した「標準」です。ペーストプロセス理論は、私が20年間以上にわたり、数多くのコンサル現場において検証を繰り返し、実用性がある考え方として確立し、実践してきたものです。
スクリーン印刷に対するこれまでのネガティブなイメージや先入観を捨て、論理的整合性の観点からご評価いただければ、この理論の正しさが理解していただけると思います。これまでの対策での成功の理由も失敗の理由も明確に説明ができるようになります。初心者の方でも、この理論に基づいた「標準」を正しく実践することで、高品質印刷プロセスを短期間で構築することが出来ます。
高品質印刷プロセスの構築とは、先ず、スクリーン印刷本来の「あるべき姿」を達成するための「前提条件」を適正化することです。適正化できていない場合は、その理由、原因を見つけ出し、根本から対策することです。そして、「前提条件」が適正であれば、最終的にはインキ・ペーストの有する固有の印刷性能で印刷品質と印刷安定性が決定されます。
本講演では、最初に、スクリーン印刷の原理やメカニズムの説明、そして「版離れ角度」維持により「版離れ力」を1.5倍に向上できる新機構について解説します。次に、スキージやスクリーンメッシュなどの要素技術と「標準」について解説し、インキ・ペーストの印刷性能に影響する分散安定性、揮発性、濡れ性及び粘弾性特性を分りやすく説明します。さらに、加飾印刷における「トーンジャンプ」のないグラデーション印刷と、最近見いだした新技術であるベタパターンでの「サドル」を無くす新技術についても紹介します。
最後に、スクリーン印刷に関連する最新の情報として、印刷したインキ塗膜を5〜10倍に増膜・移載することが出来る『「リバース型インキ転写装置」を利用した超厚盛印刷技術』を紹介させていただきます。
はじめに
・スクリーン印刷の用語解説
・スクリーン印刷に関して、間違った理解をしていませんか?
1.スクリーン印刷とは?
・スクリーン印刷は、原理を知れば最も安定な印刷工法です
・版とインキを適正化すれば、手刷りで30μmラインも印刷可能な工程能力
・適正化できない要因は、不適正なスキージ、版仕様やインキの印刷性能不足
1.1 各種印刷工法の種類とインキの粘度範囲
・スクリーン印刷の各分野で使用されているインキの粘度は、適正か?
1.2 スクリーン印刷は「特殊印刷」、だから印刷安定性が高い
1.3 現状のスクリーン印刷の多くは、「技術限界」の50%以下のレベルを許容?
・正しい考えでの適正化で、大きな「伸びしろ」がある印刷技術
2.スクリーン印刷8つの適用工法
・成膜(べた印刷)、パターニング、スルーホール印刷、ビアフィル印刷、ドット印刷、(PDP)落とし込み印刷、積層印刷、転写印刷
3.「ペーストプロセス理論」の考え方の基本
3.1 印刷条件のほとんどは、予め適正化できる「前提条件」です
3.2 先ず、「版離れ」遅れの不具合を無くす事が最重要
4.「コンタクト印刷」とは通常スクリーン印刷とは全く異なる印刷工法
4.1 「コンタクト印刷」の「時差版離れ」は、型抜きでの「版剥がし」
4.2 ≪新技術≫メタルマスクでの「同期版離れ」コンタクト印刷工法
4.3 ≪新技術≫メタルマスクでの低粘度インキの定量塗布技術
5.スクリーン印刷の4つのカニズムの理解
5.1 「ローリング」のメカニズム
5.2 「充てん・掻き取り」のメカニズム
5.3 「版離れ」のメカニズム
5.4 「レベリング」のメカニズム
6.≪新技術≫「版離れ角度」制御による等クリアランス版離れ改善機構
6.1 印刷後半部での版離れ遅れ増加の原因は「版離れ角度」の漸減だった
6.2 従来ピールオフ動作では、実質クリアランス量増加による不具合発生
6.3 等クリアランス+「版離れ角度維持」動作で、「版離れ力」1.5倍
7.スクリーン印刷装置とスキージの重要性
7.1 印刷機の種類とスクリーン版
・フラットベッド印刷機、曲面(シリンダー)印刷機、ロータリー印刷機
・フラットベッドと曲面印刷機は同一仕様のスクリーン版を使用
・ロータリー印刷機用の円筒形版はテンションの無いリジット版
7.2 印刷位置合わせの方法
7.3 スキージが最も重要な印刷パラメータの要素
・最適なスキージの選択方法 ・斜め研磨スキージの効果
・スキージエッジの面取り仕上げの必要性
8.4つの印刷条件の適正化と「標準」
8.1 4つの印刷条件と印刷品質への影響
8.2 二通りの印圧設定方法 「ストッパー(押し込み)」方式と「エアー圧」方式
8.3 印刷膜厚均一性と「適正印圧」の定義
8.4 スキージ角度、速度と「充てん力」との相関
9.スクリーンメッシュとスクリーン版
9.1 ステンレスメッシュ開発の歴史とスクリーン印刷技術の進歩
9.2 スクリーンメッシュの強度 金属の「弾性変形」と「比例限界」
9.3 スクリーンメッシュ開口率とインキの吐出性(印刷解像性)
・開口率25%メッキ処理メッシュのにじみ抑制効果
9.4 超高強度ステンレスメッシュでの課題解決「無変形スクリーン版」
9.5 スクリーン製版工程の「コツ」 ポジフィルムとの密着と適正露光
9.6 水溶性溶剤でのスクリーン版洗浄作業 水スプレーでのリンス併用
9.7 スクリーン版の高品質再製版システムの実際例
10.インキ・ペーストの印刷性能の理解
10.1 インキの分散安定性
10.2 インキの含有溶剤揮発と印刷膜厚変化
10.3 インキの濡れ性と不具合
10.4 インキの粘性特性と弾性特性
・メッシュ起因の気泡発生のメカニズム
11.≪最新技術≫「トーンジャンプ」のないグラデーション印刷
11.1 なぜ、スクリーン印刷でグラデーション印刷が困難と思われていたか?
11.2 「トーンジャンプ」を起こさない最適「網点」とは?
11.3 原理的に「トーンジャンプ」が発生しない網点仕様と製版技術
12.≪最新技術≫ベタ印刷での「サドル」の解消方法
12.1 細線、中間ライン、ベタパターンでの印刷膜厚決定メカニズムの違い
12.2 スクリーン印刷の宿命とされていたベタパーンでの「サドル現象」
12.3 ベタ印刷での「サドル」不具合の解消方法
13.高品質スクリーン印刷プロセス実践のための具体的な対策手法
13.1 印刷均一性を阻害する要因とその対策手法
13.2 印刷寸法精度を損なう要因とその対策
13.3 スクリーン印刷におけるその他の不具合対策
・乾燥のメカニズムとその重要性
・静電気による不具合と対策
14.最新の関連技術情報及び高品質スクリーン印刷の応用例
≪最新関連技術≫ 「リバース型インキ転写装置」を利用した超厚盛印刷技術
・マイクロ文字印刷、フレキシブル基板多層印刷、銀ナノインキの薄層印刷、非接触スクリーン印刷など
【質疑応答】
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