【習得できる知識】
・接触角,表面張力,表面自由エネルギーの基本概念
・接触角測定の注意点
・表面自由エネルギー解析の方法
【講座の趣旨】
材料表面のぬれ性は,親水化や撥水化の技術だけでなく接着性,離型性,防汚性,洗浄性等にも密接に関連しています。ぬれ性を評価するための代表的な手法の1つが接触角測定です。接触角は,測定そのものは簡単ですが,材料の表面特性をきわめて鋭敏に反映します。ぬれ性の良否を決めるのは,液体,固体の表面張力(表面自由エネルギー)です。表面張力は分子間力に由来します。分子間力にはいくつかの発現機構がありますが,その機構に応じて,表面張力をいくつかの成分に分解しようというのが成分分けの概念です。これによって,ぬれ性をはじめとする界面現象をより深く理解することができます。そして,ある理論に基づいて,表面張力の成分を計算で求めようというのが表面自由エネルギー解析といわれる手法です。
本講義では,ぬれ性評価の基本となる接触角と表面張力の概念について説明したのち、これまでの相談事例などを踏まえ,接触角の測定上の注意点を解説します。さらに応用として,表面自由エネルギー解析の手法と注意点について解説します。
1.ぬれと接触角
1.1 接触角とは
1.2 ぬれ性と接触角との関係
1.3 接触角から何がわかるか
1.4 接触角測定の表面感度 ? 膜厚と表面被覆率
2.表面張力
2.1 表面張力とは
2.2 液体の表面張力が大きくなるとぬれ性はどうなるか
2.3 表面張力から何がわかるか
3.ぬれ現象の理解
3.1 界面張力とは
3.2 固体の表面張力の意味
3.3 固体の表面張力が大きくなるとぬれ性はどうなるか
3.4 Youngの式~接触角と表面張力との関係
3.5 ぬれ性を制御するにはどうすればよいか
4.表面張力の理解
4.1 表面張力の定義
4.2 表面自由エネルギーとは
4.3 表面張力は何に由来するか
4.4 表面張力と水素結合との関係
4.5 表面張力とフッ素との関係
4.6 液滴はなぜ丸くなるか
4.7 表面張力と温度との関係
5.表面粗さと接触角
5.1 Wenzel理論
5.2 Cassie理論
5.3 親水表面を撥水化するにはどうすればよいか
6.接触角の測定方法と測定上の注意点
6.1 接触角の測定方法
6.2 接触角は10°ばらついてアタリマエ
6.3 接触角は何回測定すればよいか
6.4 接触角と表面汚染 ? 大気曝露時間、汚染量
6.5 各種洗浄による接触角の変化
6.6 接触角の定義をどうするか〜液量依存性と経時変化
6.7 固体表面の帯電の影響
6.8 試液として蒸留水は使えない?
7.表面自由エネルギー解析
7.1 表面自由エネルギーの成分分けとは
7.2 表面自由エネルギー解析から何がわかるか
7.3 付着・分離と表面自由エネルギー: Dupreの式
7.4 どんなときにどんな分子間力がはたらくか
7.5 Fowkesの理論と検証
7.6 解析の実際 ? Kaelble理論の例
7.7 なぜエネルギー成分に注目するのか
7.8 界面の作りやすさとエネルギー成分との関係
7.9 付着性・接着性・離型性・防汚性とエネルギー成分との関係
7.10 表面張力が同じでも,ぬれは異なる
8.表面自由エネルギー解析の注意点
8.1 解析理論の未確立
8.2 液体の組み合わせによって解析結果が異なる
8.3 接着性評価に表面自由エネルギー解析を適用できるか
【質疑応答】
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