【講座概要】
接着の原理、接着剤の種類と選定方法、表面処理法など基礎的なことを解説するとともに、各種接着接合部の応力分布の特徴、破壊条件,最適接合部の設計法,継手に対する安全率と故障確率の計算法、環境耐久性と寿命予測法,疲労強度の評価技術について詳述し、接着トラブルの原因別分類・事例と対策についても解説する。
ご質問に対しては,回答書により講師の多年の実務経験に基づいてご回答するとともに,ご希望により1時間ほどZoomによりご対応いたします。
【受講後、習得できること】
接着の基礎,メカニズム,接着剤および表面処理の選定法,接着剤を用いない異種材料接合法,代表的接着継手の応力分布と破壊条件,接着継手の強度,信頼性および耐久性向上法と評価法,接着継手のトラブル事例と対策について
【受講対象】
メーカー等において製品に接着を応用するため,接着の基礎,主な継手の応力分布,強度,信頼性,耐久性評価および寿命予測法について知りたい方
【プログラム】
1.接着力発現の原理
1.1 化学的接着説 (結合エネルギーと静的接着強度および耐久性との関係)
1.2 機械的接合説(アンカー効果)
1.3 からみ合いおよび分子拡散説
1.4 接着仕事から計算される理想接着強度と実際の接着強度の相違の理由
1.5 シーリング材の接着力発現の原理と役割
1.6 粘着剤の接着力発現の原理と役割(どのようなものが粘着剤になりうるのか)
2.各被着材に適した接着剤の選定法
2.1 Zismanの臨界表面張力による接着剤選定法
2.2 溶解度パラメータによる接着剤選定法(結晶性高分子が難接着性である理由とそれを解決するための表面処理法)
2.3 被着材と接着剤との相互の物理化学的影響を考慮した接着剤選定法
3.接着剤の種類、特徴および最適接着剤の選定法
3.1 各接着剤の種類
@耐熱航空機構造用接着剤
Aエポキシ系接着剤(液状)
Bポリウレタン系接着剤(室温硬化型)
CSGA(第2世代アクリル系接着剤)
Dシリコーン系接着剤
E変成シリコーン系接着剤
Fシリル化ウレタン系接着剤
GUV硬化型接着剤
3.2 各種被着材に適した接着剤の選び方(選定のための接着剤性能表)
3.3 各種シーリング材の性能および用途
3.4 種々の接着剤の各種条件(米国連邦規格)における接着強度と変動係数
3.5 新構造材料技術研究組合 ISMA による接合技術開発状況
4.被着材に対する表面処理法の選定法
4.1 金属の表面処理法
@ 洗浄および脱脂法
A ブラスト法(空気式,湿式)
B アルミニウム(エッチング法,陽極酸化法)
C 炭素鋼
D ステンレス鋼
E 各種エッチング法
F 銅およびニッケル箔の表面処理状態とはく離エネルギーとの関係
4.2 プラスチックの表面処理法
@ 洗浄および粗面化
A コロナ放電処理法
B プラズマ処理法
C 火炎処理法
D 紫外線/UV処理法
E 各種表面処理方法(JISK6848-3法,ふっ素樹脂に対するテトラエッチ液による表面処理法)
4.3 プライマー処理法
5.接着剤を用いない最新の異種材料接合法
@金属の湿式表面処理-樹脂射出一体成形法
A被接合材表面のレーザー処理−樹脂射出一体成形法
Bレーザー接合法
C摩擦接合法
D溶着法
E分子接着剤利用法
Fゴムと樹脂の架橋反応による化学結合法
6.エッチングまたはレーザー処理後の射出成形法または融着法における接着力発現の原理
@接着・接合力が向上する原理
A耐久性が向上するメカニズム
B樹脂どうしの融着による接合の場合の接着強度発現の原理
7.接着継手形式および接着部に加わる外力の種類
@接着接合の長所と短所
A各種接着継手形式
B接着部に加わる外力の種類
8.各継手の応力分布および強度評価
8.1 重ね合せ継手の応力分布(弾性解析解および弾性有限要素解析結果)
8.2 重ね合せ継手の弾塑性FEM応力解析結果に基づいた実験結果の検討例
8.3 Al重ね合せ継手の引張せん断試験結果およびFEM解析による検討例
8.4 CFRTP重ね合せ接着継手の引張せん断試験結果に対する結合力モデル(CZM)法による解析例
8.5 重ね合せ継手の接着層厚さと接着強度との関係(接着層が厚いほど強度が小さくなる理由)
8.6 スカーフ継手および突合せ(バット)継手の特徴,応力分布および破壊条件
8.7 接着接合部における特異応力場の強さを用いた接着強度の評価事例
8.8 バイメタル法および接着剤硬化収縮量測定装置による実測応力が予想より小さく,温度低下による熱
応力が硬化収縮応力より大きくなる理由
8.9 はく離応力の解析例/可撓性被着材のはく離による応力分布/
はく離角度による応力分布の変化に関する解析/接着層が厚い方がはく離強度が増加する理由
8.10 スポット溶接−接着併用継手の応力解析例(併用により強度が向上する理由)
9.最適接合部の設計
9.1 強い接着接合部を設計するための一般的留意事項
9.2 接着接合部の設計
10.接着接合部の故障確率と安全率との関係
接着接合部の経年劣化による故障発生のメカニズム(ストレス−強度のモデル)
11.所定年数使用後の接着接合部に要求される故障確率確保に必要な安全率の計算法
11.1 正規分布について
11.2 ストレス(負荷応力)が変動する場合の接着継手の故障確率の確保のために必要な安全率の決定法(EXCEL計算シートを提供)
11.3 実構造物に発生するストレスの変動係数の測定法および必要な故障確率を確保するための方法
11.4 接着強度の変動係数実測値
11.5 ストレス(負荷荷重)の変動係数の実例
11.6 加速劣化試験または疲労試験による寿命LまたはNにおける継手の接着強度の分布(確率密度関
数)の決定方法
12.接着接合部の劣化の要因ならびに加速試験と加速係数
@接着接合部劣化の要因
A加速試験と加速係数
B加速試験条件の決定方法
13.アレニウス式(温度条件)による劣化,耐久性加速試験および寿命推定法
(重回帰分析によるEXCEL計算シートを提供)
@化学反応速度式と反応次数
A濃度と反応速度および残存率との関係
B材料の寿命の決定法
C反応速度定数と温度との関係
Dアレニウス式を用いた寿命推定法
14.アイリングの式およびジューコフの式による応力,湿度などのストレス負荷条件下の耐久性加速試験および寿命推定法
(重回帰分析によるEXCEL計算シートを提供)
14.1 アイリングの式を用いた寿命推定法
14.2 アイリング式を用いた湿度に対する耐久性評価法
14.3 Sustained Load Testによる接着継手の温度,湿度,および応力負荷条件下の耐久性評価結果
14.4 自動車技術会による回収市場経年実車接着部の残存接着強度実測値
14.5 市場経年自動車と同等の残存接着強度接着部を加速試験により作り出す方法
14.6 ジューコフ(Zhurkov)の式を用いた応力下の継手の寿命推定法
14.7 ジューコフの式による接着継手のSustained Load Test結果の解析
14.8 ウェッジテストによるボーイング社の航空機接着部の耐久性試験結果
15.接着継手の耐水性および耐油性に関する熱力学的検討および耐水性向上法
15.1 液体中における接着接合部の安定性の熱力学的検討
15.2 接着接着部の耐久性に水が及ぼす物理的および化学的影響の実例
15.3 接着接合部の耐水性向上法
16.繰返し応力(疲労)による加速耐久性評価法
16.1 接着継手の引張せん断疲労特性試験方法
16.2 アイリングの理論から誘導されるS-N曲線
16.3 マイナー則(線形損傷則)
16.4 スポット溶接−接着併用継手(ウェルドボンディング)のFEM解析結果および疲労試験結果(クリープ防止策による強度向上法)
16.5 リベット−接着併用継手(リベットボンディング)の疲労試験結果(クリープ防止策による強度向上法)
17.接着接合部のクリープ破壊強度評価方法
@ 大変形クリープの一般的特性
A ラーソン-ミラーの式
B クリープ破断データからラーソン-ミラーの式を求める方法
C プラスチックのクリープ試験におけるラーソン-ミラー線図
D JIS K6859 接着剤のクリープ破壊試験方法
18.接着トラブルの原因別分類と対策および各トラブル事例と対策
18.1 原因別分類とその対策(表の概説)
18.2 多数の具体的トラブル事例およびその原因と対策
【質疑応答】 |