【講座概要】
ポリマー材料との複合化に用いるシリカは安価な増量材としての役割だけでなく、近年ではポリマーの特性向上や新機能の付与のための添加剤(フィラー)として注目されています。とりわけnm寸法のシリカナノフィラーを高分散状態でポリマーと複合化したナノコンポジットは、力学特性はじめ優れた特性発現が期待されています。ただし、望まれる特性を発現させるには、ナノシリカの十分な理解と適切な材料選択が必要となるほか、ポリマーの種類に合わせた分散性の均質化、シリカ/ポリマー界面制御、ポリマーとの混合・混練技術といった多岐にわたる知見が必要となります。これらの技術は一部複合材料で実用化されているものの、一般には製品の安定的な製造や信頼性の高い材料品質の確保が経験則に基づいて推し進められている場合も多々見受けられます。そのため、シリカ/ポリマー系ナノコンポジット開発における品質と生産性の両立に向けて最小のコストで最大の効果を狙うには、経験と理論のバランスのとれた的確なアプローチが必要となります。
本セミナーでは、大学でこの分野の基礎研究を推進している講師の経験を通して上記の技術を系統的かつ学術的に理論づけした実務への活用のきっかけに繋がる内容を講演します。
ナノコンポジットのフィラーとしてのシリカの活用事例としては、従来型コンポジットの紹介だけでなく、講師が研究開発しているシリカナノフィラーの表面改質処理を必要としない新しいポリマー系ナノコンポジットに関する簡易調製技術やそのノウハウとキーポイントを説明します。さらには、ポリマー系コンポジットとしての優れた材料特性の発現におけるシリカナノフィラーの役割・効果について、実験から得られた知見のみならず、一部引張特性・熱伝導特性については、対象コンポジットのモデル化および有限要素解析により得られる予測技術についても言及し、実測・解析両知見を紹介しつつ、分かりやすく解説します。
【受講後、習得できること】
ポリマー素材メーカー、フィラーをはじめとした微粒子材料メーカーでご活躍の技術者の方
【受講対象】
フィラー・微粒子の取り扱い、ポリマーとのブレンドノウハウ、無機/ポリマー系コンポジットの特性とフィラー分散性の関係の理解とその理解に基づくコンポジットデザインの考え方
【プログラム】
1.無機ナノフィラーの基礎(シリカを中心として)
1.1 ナノフィラーの基本物性
1.2 無機微粒子の分散安定性
1.3 無機微粒子の分散・凝集制御の理論と実際
1.3.1 無機微粒子の分散・凝集制御理論
1.3.2 無機ナノフィラーの表面改質技術
1.3.3 無機ナノフィラー分散・充填ポリマー系ナノコンポジットの従来型調製法と代表的特性
2.無機ナノフィラーの表面改質処理を用いない新規なポリマー系ナノコンポジットの簡易調製法
2.1 無機ナノフィラーのポリマー中への高分散のキーポイント
2.2 親水性ナノシリカを事例とした本調製法にて使用する無機ナノフィラー粉体の特徴
2.3 親水性ナノシリカをフィラーとした熱可塑性・熱硬化性ポリマー系ナノコンポジットの各論
2.3.1 シリカ/フッ素樹脂系
2.3.2 シリカ/エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂系
2.3.3 シリカ/ポリスチレン系
2.3.4 シリカ/ポリプロピレン系
2.3.5 シリカ/高密度ポリエチレン系
2.3.6 シリカ/アクリル樹脂系
2.3.7 シリカ/ポリカーボネート系
2.3.8 シリカ/エポキシ樹脂系
2.4 異種ナノ粒子複合フィラーの活用技術
2.5 ポリマー母相中でのナノフィラー導入位置制御を施したコンポジット膜の微視構造デザインと調製事例
3.無機ナノフィラーの分散がポリマー系ナノコンポジットの諸特性に及ぼす影響・効果と材料設計のポイント
3.1 実測結果と数値シミュレーションに基づく力学特性制御
3.1.1 引張特性とその向上のためのナノコンポジット設計のポイント
3.1.2 耐衝撃特性とその向上のためのナノコンポジット設計のポイント
3.1.3 シリカと異種粒子の複合フィラーによるポリマーの硬さ・強さと耐衝撃性の両立実現の取り組み事例
3.2 実測結果と数値シミュレーションに基づく熱物性制御
3.2.1 シリカ/エポキシ樹脂系ナノコンポジットの線熱膨張率・耐熱性
3.2.2 窒化ホウ素と酸化物のナノ粒子複合フィラー充填エポキシ樹脂系コンポジットの熱伝導率と微視構造の関係
3.3 光学特性制御
【質疑応答】 |