【講演概要】
地球レベルでの環境負荷が問題となる現在では,持続可能な社会を構築するためにどのような貢献ができるかが重要です。膜分離工学は,化学や医薬などすべての工業プロセスで重要な役割を果たし,水処理や水素・CO2分離のような環境問題の解決においてもキーテクノロジーとなるため,国連が定めた,Sustainable
Development Goals(SDGs,持続可能な開発目標)への貢献が大きい技術です。当研究室では,シリカ,チタニアなどの無機材料,および有機・無機ハイブリッド材料に着目し,製膜・評価技術の確立,透過・分離特性の検討を通じてあらゆる膜分離プロセスについて基礎から実用レベルの研究を行っています。本講演では,シリカ系多孔膜の技術背景を踏まえた上で,CO2分離のためにアモルファスシリカの細孔径制御に着目した研究成果を紹介します。また,CO2と膜との親和性(吸着性)を制御するために,ネットワーク構造にアルキルアミノ基を導入したアミノシリカ,有機キレートを炭化した膜のCO2吸着特性などの研究成果についても紹介します。
【受講対象】
膜分離に関心のある方,ガスメーカー,各種の化学プロセス・環境プロセスに従事されている方
【受講後、習得できること】
膜分離に関する基礎知識
シリカ系多孔膜の技術背景・特徴
ガス透過法によるサブナノ細孔径評価技術
シリカ系多孔膜の細孔径制御技術,CO2分離特性の研究動向
1.はじめに
1.1 カーボンリサイクルにおけるCO2分離回収技術
1.2 CO2分離回収技術の概要
1.3 膜分離工学によるプロセス強化
1.4 膜分離法の種類と分離対象
1.5 膜分離によるCO2分離の概要
1.6 膜分離工学のイノベーション(代表的な膜材料と膜構造)
2.シリカ系材料を用いたガス分離膜の作製・ガス透過性評価手法
2.1 ゾル-ゲル法によるシリカ多孔膜(ゾル調製,製膜法)
2.2 サブナノレベルの細孔径評価技術(ガス透過法)
2.3 ガス性能評価:透過率と透過係数,トレードオフカーブ
2.4 ガス透過率の測定:装置概要,透過率の算出法(擬定常法,容積法)
2.5 2成分混合ガスの分離:分離予想線と分離限界線
3.シリカ系多孔膜によるCO2分離
3.1 シリカ多孔膜の技術背景・特徴
3.2 シリカ系材料によるCO2分離膜の設計指針
3.3 分子ふるい制御型
3.3.1 オルガノシリカによる細孔径制御:テンプレート法,スペーサー法
3.4 CO2吸着性制御型
3.4.1 アミン系シリカによる細孔構造制御,表面改質(グラフト化)
3.4.2 第1~3級アミンの吸着力がCO2透過性に及ぼす影響
3.4.3 TFAを用いたアミン形態,多孔性制御
3.4.4 オルガノシリカ+アルキルアミンによるDual-Network構造
4.Carbon-SiO2-ZrO2複合酸化物によるCO2分離(CO2トラッピング)
4.1 有機キレートを用いたSiO2-ZrO2マイクロポーラス構造制御
4.2 C-SiO2-ZrO2におけるCO2の吸着特性
5.総括
【質疑応答】
|