「月刊PHARMSTAGE」2025年2月号プレビュー

巻頭

後発医薬品及び一般用医薬品における最近の動向

(Latest Topic of Generic and OTC Medicines)

影山 大夢,石原 聡恵  厚生労働省医薬局医薬品審査管理課主査

1.はじめに

 医薬品を取り巻く環境は,新薬の登場や後発品の参入,医療用医薬品から要指導・一般用医薬品への拡大など,社会のニーズに応じて日々変化している。そうしたニーズに対応するため,行政においても法改正から通知等を通じて都度制度の見直しを行っているところ,本稿では,後発医薬品と一般用医薬品についてそれぞれ1 つずつ,最近の動向についてご紹介したい。


2.後発医薬品における自主点検について

 医薬品の品質問題は,服用者の健康に直接的に影響を与えることに加え,回収や出荷停止になることにより市場流通量が減少し関連品目の供給不安定化を引き起こすことから,その改善及び品質確保に向けた取り組みは厚生労働省にとって最重要課題の1 つとなっている。近年,製造実態隠蔽や睡眠導入剤混入の問題等が立て続けに生じたことにより品質確保に対する信頼が揺らいでおり,これまで,平成28 年には厚生労働省の指示に基づく一斉点検1)を,また令和3 年には日本ジェネリック製薬協会による自主的な点検が行われてきた。 しかしながら,依然として,特に後発医薬品の製造販売業者に対する行政処分等が立て続いており,厚生労働省が開催する会議2)においては,「自主点検をしても見逃されているのではないか」,「今までの方法では意識的・無意識に関わらず,隠している・隠れているものは見つけられないのではないか」等の指摘もなされている。こうしたことも踏まえ,後発医薬品への信頼性回復に向け業界全体として取り組んでもらうべく,改めてより実効性の高い自主点検を日本製薬団体連合会を通じ,各事業者に取り組んでいただくこととした3)
 当該自主点検については令和6 年4 月5 日から同年10 月31 日の間に実施された。点検対象は後発医薬品の製造販売承認を有する全172 社,点検手法は,ラインバイラインによる承認書と手順書等の突号に加え,各種「書面」と「製造実態」の乖離がないか,製造・試験等に従事している従業員等へのヒアリングも実施して頂いた。また,自浄作用を高めるため,公益通報窓口の設置・周知も求めた。更に,行政としては,自主点検後に都道府県による無通告立入検査が続くことを事前に周知することにより実効性を担保するとともに,その立入検査に際しては,都道府県の状況に応じ独立行政法人医薬品医療機器総合機構が実施・支援できる体制とすることとしている。
 また,自主点検後の薬事手続きについては,令和6 年10 月30 日付けで厚生労働省から通知4)及び事務連絡5)(以下「点検後薬事手続通知等」という。)を発出しており,当該自主点検の対象となっている事業者においては,点検後薬事手続通知等や手続きフロー(図1)もよく確認の上,令和7 年4 月30 日までに適切な薬事手続きを行うこととしている。

 図1 対応手続きのフロー


3.スイッチOTC 化を通じたセルフメディケーションの推進

 自らの健康はできる限り自らで管理する「セルフケア・セルフメディケーション」の推進は,厚生労働省にとって重要な使命の一つであり,医薬品審査管理課では,この一助となる「スイッチOTC 化」についても取り組んでいる。「スイッチOTC 医薬品」とは,医療用医薬品として承認されている医薬品のうち,その効能・効果及び用法・用量の範囲内で要指導・一般用医薬品として承認される医薬品だが,令和6 年3 月,規制改革推進会議健康・医療・介護ワーキング・グループにおいて,厚生労働省,医薬品医療機器総合機構及び日本OTC 医薬品協会からなるスイッチOTC WG を新設し,スイッチOTC 医薬品の審査に必要となる申請資料の見直し等を含め,迅速なスイッチ化に向けた取組を協議・実施していく旨を報告していた。本稿では,現時点までの進捗についてご紹介したい。
 従前では,新規にスイッチOTC 医薬品となる成分の承認申請に際して,その臨床試験結果の添付を要求していたが,スイッチOTC WG において,審査における臨床試験結果の活用状況について改めて精査したところ,以下の状況であった(対象:要指導医薬品の区分が設定された平成26 年6 月以降に承認した新規スイッチOTC医薬品18 品目)。

  @ 医療用医薬品の臨床試験結果の再解析を添付した事例(8 品目)
  A 医療用医薬品の臨床試験結果をそのまま添付した事例(10 品目)
  B 医療用医薬品の臨床試験結果以外の臨床試験結果を添付した事例(0 品目)

 @のケースについて更に詳細を確認すると,医療用医薬品の臨床試験に「スイッチOTC 医薬品が対象としない重症度等のデータ」が含まれていたり,「スイッチOTC 医薬品として規定しようとする申請用法・用量以外のデータ」が含まれていたりしたため,スイッチOTC 医薬品が対象とする使用集団に限定して有効性等を検証する必要があったために実施されたものであった。また,Aのケースについても,その審査において,スイッチOTC 医薬品として使用される場合に想定される新たな知見は認められなかった。
 上記の結果及び,スイッチOTC 医薬品成分は,医療用医薬品として長年使用され,適切に使用すれば,その有効性及び安全性は十分に確保されることが既に確認されているものであることを踏まえ,今般,「以下の@B又はABを満たす新規スイッチOTC 医薬品の申請に際しては臨床試験結果の提出は必須ではない」と整理し,令和6 年10 月,関係通知等の改正を行った(「「医薬品の承認申請について」の一部改正について」(令和6 年10 月9 日付け医薬発1009 第1 号))。

  @ 元となる医療用医薬品と生物学的同等性が確認されている場合
  A 元となる医療用医薬品と同一成分及び分量並びに剤形である場合
  B 効能又は効果が元となる医療用医薬品の承認事項の範囲内であり,各々の効能又は効果について用法及び用量が元となる医療用医薬品の承認事項と同一である場合

 ただし,申請に際して添付すべき資料については上記のとおり一部変更したものの,スイッチ化はすなわち医師による診察等が入らなくなることを意味するため,従前より承認審査において重視している,@薬局等での購入時に薬剤師から需要者へ行うスイッチOTC 医薬品の確認事項・指導内容の充実性,A適正使用を確保するための方策の適切性の観点,等については,引き続き,重点的に行っていくべきことも併せて確認された。
 厚生労働省では,セルフメディケーションの推進に向け,平成28 年4 月より「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」(以下,「検討会議」という。)を開催しており,各ステークホルダーからの多様な意見を踏まえ,スイッチ化に係る課題やその解決策について公開で議論を行ってきたが,今般,規制改革実施計画(令和6 年6 月21 日閣議決定)において更なるスイッチ化推進に係る新たな目標が設定されたことを踏まえ,令和6 年10 月,今後の検討会議の進め方を変更した。主な変更点は以下のとおり。

  @ これまで,検討会議後に行っていたパブリックコメントとは別に,要望者以外のニーズ等を予め広く収集することを目的として,候補成分に関するご意見募集を評価検討会議前に実施する。
  A 候補成分のスイッチOTC 化に係る見解について,これまでは関係する学会・医会のみから聴取していたが,今後は業界からも聴取することとする。
  B 企業が要望又は申請した成分であって,当該企業が希望する場合には,企業のご意見を良く伺うため,検討会議への出席又はヒアリンクを行うことする。
  C 「とりまとめ・公表」までの評価検討会議の回数を原則として1 回とする。

 この変更を通じて,これまでよりもより深い議論かつ迅速な結果とりまとめを目指していきたい。
 厚生労働省としては,上記に留まることなく,更なるスイッチ化の促進,更にはその先のセルフケア・セルフメディケーションの推進に向けて,引き続き取組を進めて参りたい。

 図2 検討会議における検討の進め方


 ◆続きは「月刊PHARMSTAGE」2025年2月号 本誌でご覧ください◆

  月刊PHARMSTAGEのホームページはこちら
  
https://www.gijutu.co.jp/doc/magazine_pharm%20stage.htm



参考文献

1)医薬品の製造販売承認書と製造実態の整合性に係る点検の実施について
 (平成28 年1 月19 日付け薬生審査発 0119 第 1 号,厚生労働省医薬・生活衛生局審査管理課長通知)

2)第11 回医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_38628.html

3)後発医薬品の製造販売承認書と製造方法及び試験方法の実態の整合性に係る点検の実施について
 (令和6 年4 月5 日付け医政産情企発0405 第1 号・医薬薬審発0405 第8 号・医薬監麻発0405第1 号,
  厚生労働省医政局医薬産業振興・医療情報企画課,
  医薬局医薬品審査管理課長及び監視指導・麻薬対策課長連名通知)

4)後発医薬品の製造販売承認書と製造方法及び試験方法の実態の整合性に係る点検後の手続きについて
 (令和6 年10 月30 日付け医薬薬審発1030 第5 号,厚生労働省医薬局医薬品審査管理課長及通知)

5)後発医薬品の製造販売承認書と製造方法及び試験方法の実態の整合性に係る点検における相違の考え方について
 (令和6 年10 月30 日付け厚生労働省医薬局医薬品審査管理課及び監視指導・麻薬対策課連名事務連絡)

 

後発医薬 一般用 医薬品 行政 自己点検 動向 専門誌


 

このトピックスに関連する書籍

最新GMPおよび関連ICHガイドライン 対応実務 2024年9月 A4判 667頁 66名 2263
 

このトピックスに関連するセミナー

 
N0
開催日
講師  
タイトル
502114
502165

2/18(火)

3名

医薬品マーケティング・市場予測 基礎と応用
 〇 Live配信 : 2025年2月18日(火)  
 〇 アーカイブ配信 : 2月28日〜3月9日まで


503113
503163

3/18(火)

1名

高額医療材料・再生医療製品の保険償還最新動向と償還申請の進め方
 〇 Live配信 : 2025年3月18日(火)  
 〇 アーカイブ配信 : 3月28日〜4月6日まで