「月刊PHARMSTAGE」2025年3月号プレビュー

特集 「ICH M8 に対応した電子申請の勘所」

eCTD 申請におけるアウトソーシング利用時の留意点

江本 博治  (株)ディジタルメディアシステム 代表取締役社長

1.はじめに

 2004 年4 月にeCTD(electronic Common TechnicalDocument)の申請が開始されてから,約20 年が経過しました。弊社は,eCTD 申請の開始当初から,ドイツのLORENZ 社が提供するeCTD 編纂システム「LORENZdocuBridge」の国内導入・販売を手掛けてきました。さらに, 2006 年よりeCTD 申請のアウトソーシングサービスを提供し,これまでに300 件以上の申請支援業務を実施してきた実績があります。
 現在,eCTD のバージョン3.2.2 が義務化され,各製薬会社はPMDA(医薬品医療機器総合機構)のeCTD 申請業務に対応しています。本書では,eCTD 申請におけるアウトソーシングを活用する際の留意点について解説します。さらに,後半では2026 年4 月に開始されるeCTD v4.0 に関する重要なポイントについても触れます。

2.eCTD 申請におけるアウトソーシング利用時の重要ポイント

 eCTD(電子コモン・テクニカル・ドキュメント)は,医薬品の薬事申請における電子化の一環として導入されており, 申請書類やデータの形式が標準化されています。そのため,アウトソーシングを利用する際には,委託先と密に連携しながら申請業務を進める必要があります。スムーズな申請を実現するために,以下の点に留意することが大切です。

2.1 PMDA の規制要件の理解

 eCTD は国や地域ごとに規制要件が異なります。例えば,日本のPMDA(医薬品医療機器総合機構),米国のFDA(アメリカ食品医薬品局),および欧州のEMA(欧州医薬品庁)では, それぞれ異なる技術仕様およびフォーマット要件が求められます。特に日本のPMDAでは,シーケンス管理,モジュール構成,バリデーションチェックの厳格な基準が設けられているため,最新のガイドラインに従うことが求められます。
 PMDA のホームページでは,以下の情報を確認できます。
 ・最新の規制要件やガイドライン
 ・申請書類の提出方法および必要書類
 ・eCTD に関する最新情報
 ・セミナーや講習会の開催情報
 ・申請者向けのFAQ
 また,アウトソーシング先の選定においては,eCTD申請の実績や規制要件に対する知識が十分であるかを確認することが重要です。

2.2 eCTD の品質管理と整合性

 eCTD では大量の電子データを取り扱うため,品質管理が極めて重要となります。誤記やデータの欠損が発生すると,審査遅延や追加提出のリスクが高まるため,以下の点を厳密に管理する必要があります。
 ・ 申請データの正確性,完全性,最新性を維持するためのプロセスを確立する。
 ・ アウトソーシング先が適切なデータ管理環境を持ち,バリデーションツールを活用できるかを確認する。
 ・ 申請ファイルの保全・管理方法について委託先と合意を取る。
 ・ 各シーケンス間の整合性を確保するためのQCチェックを実施する。

2.3 セキュリティとコンプライアンス

 eCTD 申請には機密情報が含まれるため,アウトソーシング先のセキュリティ対策を確認することが重要です。具体的には,以下の点に留意します。
  ・ 申請文書の受け取りに関するSOP(標準作業手順書)の確立
 ・ アクセス制限の有無(プロジェクトの関係者のみアクセス可能であること)
 ・ GDPR(EU 一般データ保護規則)や各国の個人情報保護規制への準拠状況
 ・ ISO9001 やISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)などの認証取得の有無および更新状況の確認
 なおGDPR については近年欧米の製薬会社内でのセキュリティポリシーとして必要となることがある。

2.4 アウトソーシング契約の明確化

 業務委託契約では,以下の点を明確にすることが重要です。
 ・ アウトソーシングサービスの範囲と責任分担の確認
 ・ 実行するアウトソーシングサービスの契約納期とスケジュールの確認
 ・ 成果物に対する検証(品質基準の設定)
 ・ 委託費用および相互間の責任範囲の明確化
 ・ トラブル発生時のSOP や問題解決の対応策の明確化
 ・ 規制変更があった際の対応方針を事前に策定する

2.5 アウトソーシング先とのコミュニケーション

 eCTD 申請では,進捗報告や問題発生時の対応が迅速に行えるよう,アウトソーシング先と緊密な連携を取ることが必要です。専任の窓口を設定し,疑問点を即座に確認できる体制を構築することが望ましいです。

2.6 技術的スキルとシステム環境の確認

 eCTD 申請には専用のソフトウェアが必要となるため,アウトソーシング先が適切なツール(eCTD 編纂システム,バリデーションツールなど)を保有し,技術力を備えているかを確認する必要があります。また,ツールの互換性や将来的なアップデートの対応も考慮することが重要です。

2.7 スケジュール管理

 eCTD 申請は規制当局による期日が設定されているため,詳細なタイムラインを作成し,スケジュールに余裕を持たせることが重要です。特にPMDA ではeCTD シーケンスごとの提出スケジュールが厳格に管理されているため,スケジュール遅延を防ぐための対策を事前に講じておく必要があります。

2.8 トレーニングと教育

 アウトソーシング先のスタッフが最新のeCTD 要件や技術仕様(バージョンアップやICH の更新など)を十分に理解しているかを確認し,必要に応じてトレーニングを実施することが望ましいです。特に,規制変更が頻繁に行われるため,継続的な教育プログラムの導入を検討することが有効です。

2.9 申請後のサポート

 申請後,規制当局からの質問や修正依頼が発生する可能性があります。アウトソーシング先と事前に対応体制を整え,迅速に修正対応できる体制を確保することが重要です。また,ライフサイクル管理の観点から,提出後のeCTD の更新・管理についても委託先と合意を取ることが望ましいです。


 ◆続きは「月刊PHARMSTAGE」2025年3月号 本誌でご覧ください◆

  月刊PHARMSTAGEのホームページはこちら
  
https://www.gijutu.co.jp/doc/magazine_pharm%20stage.htm

 

参考文献
eCTDv4 国内実装ガイド(JP IG)一覧の情報を参考にしています。

1)ICH 電子化コモン・テクニカル・ドキュメント(eCTD)v4.0 の国内実装について v1. 5. 0
  https://www.pmda.go.jp/files/000250966.pdf

2)ICH 電子化コモン・テクニカル・ドキュメント(eCTD)v4.0 の国内実装について v1. 4. 0
  https://www.pmda.go.jp/files/000245068.pdf

3)ICH 電子化コモン・テクニカル・ドキュメント(eCTD)v4.0 の国内実装について v1. 3. 0
  https://www.pmda.go.jp/files/000234257.pdf

4)ICH 電子化コモン・テクニカル・ドキュメント(eCTD)v4.0 の国内実装について v1. 2. 0
  https://www.pmda.go.jp/files/000222266.pdf

 

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 『eCTD 関連担当者が知っておくべき電磁的記録・電子署名要件への対応』
  https://www.gijutu.co.jp/doc/magazine/p_2025_03_P02.htm

 『eCTD 関連担当者が知っておくべき電磁的記録・電子署名要件への対応 』
  https://www.gijutu.co.jp/doc/magazine/p_2025_03_P01.htm

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