「月刊PHARMSTAGE」2024年10月号プレビュー
【特集】 〜今,GMP・CMC担当者が知っておきたい最新知識〜
      改正省令に対応したGMP監査のポイント 
最新のGMPで求められるサイトQAでの具体的留意点
松本 博明 
(株)Office 貴席 代表取締役

1.はじめに

 2021 年4 月28 日に「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令の一部を改正する省令(以下,改正GMP 省令)」1)が交付された。改正GMP 省令は「品質保証の充実」及び「グローバル化」の観点にてその整備がなされ,その特徴の一つとしてICHQ102)の考え方が導入された。ここでは,経営陣に対し医薬品の開発,技術移転,商業生産,製品の終結というライフサイクル全期間にわたってしっかりと品質を確保していくことを求めている。更に,効果的な医薬品品質システムを運用していくこと,それを達成するために必要な手法である知識管理と品質リスクマネジメントの考え方を取り入れることが必要とされている。経営陣が実効性のある品質システムを構築し,品質方針および品質目標をしっかりと組織や職員に周知することが重要である。また,製品品質の照査やマネジメントレビューにてGMP の運用実態を経営陣にフィードバックさせるプロセスを整備し,経営陣はその結果に基づいて必要な資源の見直しや配分を行い,継続的改善を行うことが求められる。これら一連の課題を達成するためには,GMP 組織における「品質部門」がこれら新しい要求事項を理解し,率先してサイト全体のGMP 管理能力を上げていくことが必要である。

2 改正GMP 省令の改正事項

 改正GMP では,下記に挙げる条項について国際整合化を図ったほか,国内の通知等で示してきた内容の法制化といった国内制度の整備を行っている。

 ・ 第3 条の2:承認事項の順守に関わる条文の新設
 ・ 第3 条の3:医薬品品質システム全体を統括する概念,上級経営陣のコミットメント
 ・ 第3 条の4:品質リスクマネジメントの省令化
 ・ 第4 条:品質部門の設置の義務化,国際整合
 ・ 第8 条及び20 条:データインテグリティ概念の導入
 ・ 第8 条の2:交叉汚染防止管理の新設
 ・ 第9 条:構造設備の共用等の管理の明確化,リスクベースアプローチの導入
 ・ 第11 条:参考品,保存品管理の省令化,OOS 処理の明確化
 ・ 第11 条の2:安定性モニタリングの省令化
 ・ 第11 条の3:製品品質の照査の省令化
 ・ 第11 条の4:原料等の供給者管理の省令化
 ・ 第11 条の5:外部委託業者の管理の新設
 ・ 第14 条:変更マネジメント概念の導入
 ・ 第15 条:逸脱管理の強化

 本章では,上記の3 条から11 条の3 までの条項に関し,これら改正GMP の新しいコンセプトについて品質部門の責務を挙げるとともに,GMP 事例集3)に観られる記述も交えながら品質部門が対応すべきポイントを説明する。


3 各改正事項で求められる品質部門の責務と留意点

3.1 承認事項の順守(第3 条の2)

 改正GMP には,承認事項の順守として「製造業者等は,当該製品の製造販売承認(届出)書の製造方法及び試験方法に関する情報を当該製品の製造販売業者より入手し,承認内容と製造実態に相違が生じないようにすること。」との意図が追加された。ここでは,製造販売業者と製造業者の密接な連携が求められており,製造販売業者は製造販売承認書の内容を含む,適正かつ円滑な製造管理及び品質に関する情報を,製造業者等に提供することとされている。一方,製造業者等としても,常に最新情報を入手できるよう製造販売業者と密接に連携することが必要であり,特に,原薬等登録原簿(MF)の登録を受けている場合,製造販売業者とのMF 利用契約に基づき,自らMF 登録内容と製造実態に相違が生じないようにしなければならない。これらは経営者の責務もあるが,品質部門としても,製造所における承認事項の遵守体制の構築にあたって製造業者が最新の承認事項を把握し,医薬品製品標準書等に適切に反映する仕組みの構築,承認事項に影響を及ぼす可能性のある変更を行う際に,事前に製造販売業者の確認を得る仕組みの構築を行う必要がある。

3.2 医薬品品質システム関連(第3 条の3) 

 第3 条の3 には,医薬品品質システムの導入システム全体を統括する概念,上級経営陣のコミットメント,及びICHQ10 の「医薬品品質システム(PQS)」が導入された。条文は,「製造業者等は,実効性のある医薬品品質システムを構築するとともに,製品品質を確保するための基本的な方針(品質方針)を文書により定め,当該文書に医薬品品質システムの手続等の構成要素を示す。」とされている。また,品質方針に基づいた製造所における品質目標を文書により定めることが必要であり,これら設定について品質部門が留意すべき点は以下である。
 ・ 品質方針は,「企業の品質に関する全体的な意図及び方向を記述するもの」 であること。
 ・ 品質目標は,「品質方針及び戦略を測定可能な活動に変換するための手段」であり,組織が品  質に対して具体的に達成すべき目標であること。
 ・ 品質目標は品質方針に基づき作成され,全ての職員に周知される必要があり,それを達成するために,必要な資源を提供することが経営者に対し求められること。
 ・ 品質目標は達成度の評価が可能となるよう,測定可能なものとする必要があり,業績評価指標の確立が求められること。
 ・ マネジメントレビューを定期的に行うとともに,経営者(責任役員)に対し継続的改善について提案,意見具申すること。

3.3 品質リスクマネジメント(第3 条の4)

 国際化の整合性を図り,ICHQ94)の「品質リスクマネジメント(QRM)」の概念が導入された。条文は「製造業者等は,品質リスクマネジメントを活用して医薬品品質システムを構築した上で,医薬品に係る製品について,製造所における製造管理及び品質管理を行わなければならない。」とされている。この場合,品質リスクのアセスメント及びコントロールの基準は患者の保護が優先されなければならない。品質部門は,品質リスクマネジメントを熟知しておく必要があり,その力量を維持,向上するための教育訓練を受講しなければならない。この品質リスクマネジメントは,品質モニタリング,CAPA,変更管理,マネジメントレビュー等に組み込まれていることがポイントとなる。また,その対象は製造サイトに限定したものではなく原材料などの供給者管理及び委託先管理も含まれる。品質リスクマネジメントを効果的に機能させるために品質部門が留意すべき事項は以下である。
 ・ 品質リスクマネジメントを対象とする期間は,開発段階,商業生産,製品の終売といった製品ライフサイクルが考慮されていること。
 ・ 製品リスクの特定,分析,評価などプロセスに科学的な知識が積極的に利用されていること。
 ・ 評価結果に基づく決定の基準があらかじめ定められていること。そして判断について,主観が排除できるように工夫(意思決定プロセスで多様な者が関与する等)がされていること。
 ・ 運用が,患者保護(=品質を最優先し,品質を担保した上での安定供給)が優先されていること。
 ・ 品質リスクマネジメントに関わる人員の能力の維持向上や新たな人員確保の為の教育訓練などの取り組みが計画的かつ継続的に実施されていること。

3.4 製造部門及び品質部門(第4条)
3.5 手順書等(第8条)
3.6 交叉汚染の防止のための手順(第8条の2),及び構造設備の共用等の管理の明確化(第9条)
3.7 参考品,保存品管理,OOS規定の省令化(第11条1項)
3.8 安定性モニタリングの規定(第11条の2)
3.9 年次製品品質照査(11条の3)

◆続きは「月刊PHARMSTAGE」2024年10月号 本誌でご覧ください◆

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